2004年05月31日

Yahoo! Search Technology (YST) とは

Yahoo!JAPANが近日中に採用する、米Yahoo!の開発した独自検索技術Yahoo! Search Technology (ヤフーサーチテクノロジー、以下、YST) についての解説。書籍掲載予定の文章が一部利用できなくなったため、ここに掲載をします。

Yahoo! Search Technologyとは

YSTは2004年2月18日、米Yahoo!よりリリースされると同時に Yahoo! Search の検索エンジンを従来のGoogleからYSTに切り替えることがアナウンスされました。

YSTはYahoo!が自社で開発した検索技術です。とはいえ、全くのゼロから構築をしたわけではありません。米Yahoo!は2002年12月に検索技術開発をしていたInktomiを買収、つづいて2003年7月に検索連動型広告で急成長を遂げていた米Overture Services Inc.を買収しました。Overtureは同年2月に検索会社altavistaと、FAST社のWeb検索部門(AlltheWeb)を買収していたため、この時点でYahoo!はアルゴリズム型検索技術として Inktomi、AlltheWeb、altavistaを、検索連動型広告の技術としてOvertureを保有したことになります。

その後Yahoo!は、Inktomi、AlltheWeb、altavistaという3つの製品を1つに統合する作業を行いました。その結果生まれたのがYSTというわけです。YSTはInktomiをベースに開発、AlltheWebとaltavistaの良い点を統合したものと推測されます。その証拠に、YSTのクローラー名はYahoo! Slurpと、Inktomi時代のクローラー名 "Slurp"を引き継いでいます。

なぜ米Yahoo!はYSTを開発したか

米Yahoo!は2000年以降、今や世界最大の検索エンジン会社であるGoogleと提携をして検索サービスを提供していました。それより前はaltavistaと提携をしていました。Yahoo!は当時、検索サービスをあくまでポータルが提供する単なる1つのサービスとしてしか考えていなかったため、他社と提携してサービス提供を実現していたのです。いいかえれば、検索そのものはビジネスになる、収益の得られるサービスとは捉えていなかったのです。

しかし状況は変わります。Overtureの検索連動型広告での成功、そして検索エンジンを利用するユーザーの増加。検索エンジンがWebナビゲーションの中核をなし、Webサイトを訪問する際はまず検索エンジンというオンライン行動が顕著になりました。商品やサービス購入の検討をするユーザーに占める検索エンジン利用者の割合も急増していきます。

つまり、検索エンジンがいわばWebサイト訪問のための”入り口”としての役割を果たすようになったわけです。しかし、Googleが検索で急成長をして世界のサーチトラフィックの大半を握ったことによりこの”入り口”は完全にGoogleに押さえられてしまうのです。

従来のオンライン消費者はまず最初にオンライン小売業者のサイトを訪れそこで興味のある商品の検索を行っていました。しかし現在は検索エンジンから直接商品に関する情報を探し始め、検索結果からそれを取り扱う小売業者のサイトに直接アクセスするようになりました。このように購買のスタート地点が上流に移動した結果、検索連動型広告が利益になるのはもちろんですが、トラフィックを押さえることも重要です。しかし現状維持をすれば、それらはGoogleに完全に牛耳られることになります。

検索ビジネスが十分に大きな利益を見込める魅力ある市場へと変わった今、Yahoo!もそこに注力する戦略に転換したわけです。その戦略を実行し、より大きな利益を得るためには、検索ビジネスの各となる検索技術と広告配信技術は自社で所有する必要があります。他社の経営資源では100%自らの希望通りにコントロールすることはできないからです。

しかしゼロから検索技術を開発するのでは到底Googleには追いつけない。そこで買収戦略により手早く検索ビジネスを展開するのに必要な経営資源を獲得し(つまり、Inktomi、AlltheWeb、altavista、Overtureを手に入れ)、独自検索に切り替えを行ったのです。


YST の検索クオリティ

YSTは一般のユーザーにとってはGoogleと遜色なく高い検索能力を誇ります。「YSTの検索クオリティはGoogleとほぼ同等」というのが大半のSEO専門家の間での意見です。

検索技術面から厳密にいえば、例えばGoogleのセマンティック技術に相当するものはYSTにありませんし、まだまだGoogleの方が上です。しかし、一般のユーザーが検索体験をする上では十分に検索性能は上がっているため、その意味でYSTとGoogleに差はほとんどないといえるでしょう。

実際、蘭OneStat.comの検索エンジンシェアの推移を見ても、Yahoo!がYSTに切り替えた後もYahoo! Search のシェアは減少していません。一般に検索能力が低下したと感じた場合ユーザーはその検索エンジンから離反するのですが、こうした統計を見る限り従来Yahoo!を利用していたユーザーはそのままYSTを利用していることが読み取れます。


YST 日本語版

YSTは現在、米Yahoo!で既に採用されており、欧州やアジア・太平洋地域でもYSTへの切り替えが進められています。

ところでYahoo!ジャパンは2004年5月現在、ページ検索にGoogleを採用しており、今後については一切明らかになっていません。ただ、Yahoo!ジャパンもいずれYSTに切り替えるだろうというのがもっぱらの見方です。

その理由として、まず第1に企業戦略上、Yahoo!ジャパンにとって「YSTを今後も拒否してGoogleを継続利用する」ことに対する合理的な理由はみつからない一方で、YSTを採用した方がビジネス上のアドバンテージが十分にあることです。YSTに切り替えれば検索連動型広告は100%オーバーチュアのスポンサードサーチを表示できますし、Googleの今後の日本市場での成長の芽を摘んでおくことができます。Googleが急成長したのは米Yahoo!が採用したことで知名度が上がったことも一因という指摘がありますから、Googleの頭を先に押さえておく意味でもYSTに切り替えることのメリットはあります。

2点目として既にYahoo!ジャパンは部分的にYSTを採用しているという事実です。Yahoo!ジャパンは現在、ページ検索以外にも画像・動画・音声検索を提供していますが、これら3つの検索エンジンはGoogleではなくYSTです。

さらに3点目として、YST日本語検索が既に日本のオーバーチュアを通じていくつかのサイトに提供されていることです。2004年5月31日現在、asahi.com、NIKKEI.NET、cafesta の3サイトがオーバーチュアのネットワークを通じてYST日本語検索を採用しています。つまりYSTも日本語対応が着々と進んでいることも示しています。

このような理由を考慮すると、YSTのYahoo!ジャパンへの採用可能性は限りなく高いということです。ただしYSTは米国でもまだ今後新たな新機能を搭載するといわれており、製品としてはまだ未完成です。従って、これから搭載する予定の機能が米国でリリースされた後、それが日本語対応になった時点でYahoo!ジャパンは採用するかもしれません。Google以上のものにしあがったところで日本市場に投入すると考えた方がいいでしょう。

以上、2004年5月31日02:00 作成 (泣

2004年5月31日 10:00追記: Yahoo!JAPANがYST採用へ



執筆者:渡辺隆広(わたなべ・たかひろ):1997年より検索エンジン業界の仕事に従事。アイオイクス株式会社チーフアナリスト、SEW Japan SEMアドバイザー。現在は検索エンジン市場の最新動向および分析を中心に活動を行う。インターネットマガジンにて連載中。著書に「検索にガンガンヒットするホームページの作り方」がある。

[参考]

Yahoo!JAPAN が Google との提携に終止符を打つ日はいつか?

解説: Yahoo!、検索エンジン切り替え - Google と袂を分かつ (前編)
解説: Yahoo!、検索エンジン切り替え - Google と袂を分かつ (中編)
解説: Yahoo!、検索エンジン切り替え - Google と袂を分かつ (後編)

ref.
Search Wars: Battle Of The Search Superpowers [SearchEngineWatch.com]

2004年05月31日 12:10 | [ Yahoo!検索 ] | トラックバック


コメント

> 以上、2004年5月31日02:00 作成 (泣
(さわやかに!声高らかに!)おつかれさまです!!
いや、自分も渡辺さんほど書いてはないですが、YSTにすぐにでも導入されるぞー的なエントリ容易していたら、即採用されてましたよね。(つД`)

おつかれさまでした。

Posted by: 機械忍者 : 2004年06月01日 17:49

お疲れ様でした。
 
サーチエンジンのことを色々と分かってきました。

ありがとうございました。

Posted by: Nguyen Thi Thu Hang : 2004年06月24日 10:39

Yahoo Japanのwebページ検索エンジンは、以前はgoogle を使っていましたが、最近、米国Yahooの検索方式を導入した新しい検索エンジンYST(Yahoo Search Technology)になっていましたが、実は本日、Yahoo Japanでのwebページ検索結果とMSN Japan での検索結果とがほとんど同じであることに気が付きました。allthewWeb、AltaVista、Overture、freshEYE でのwebページ検索結果もYahoo Japanでの検索結果とほとんど同じで、みなPowered by Inktomiのようです。一方、日本語web には、MSNのサーチテクノロジプレビュー(search technology preview)やアスク ジーブス ジャパン(Ask.jp)の新しい検索エンジンが試験公開され、また、gooラボの日本語自然文検索実験など、新しい展開がありますが、Yahoo Japanの新しい検索エンジンYST(Yahoo Search Technology)はどうなったのでしょうか? YSTのベースはInktomiのようですが、今のYahoo Japan のweb 検索エンジンは、どうやら最近導入されていたYSTではなく、MSN Japan と同様、Powered by Inktomiそのもの(?)になっているように思われました。もし、この辺の事情をお聞かせ戴ければ幸いです。

Posted by: どっとKM : 2004年10月24日 00:43
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